【注:本記事は2023年3月に執筆しましたが,公開直前に観光船の転覆事故が起き,一旦公開を中止しておりました。しかしその後,海上保安庁の関係者様とお話する機会があり,コロナ禍のステージが変わり,外出やレジャーなどでの”お久しぶり利用”が増えることが予想される中,二馬力艇等のボートユーザー様への安全啓発が大切との認識で一致したことから,あらためてこの記事を公開することにしました。】
春めいてきましたね。当地,愛知県大府市は桜が満開です。
この時期,お客様からお聞きする情報として多くなるのが,オーパの名前を冠した中古ボートの売買やその品質に関してです。個人オークションサイトなどで出品されているものについて検討中の方や,すでに購入された方からの相談が,春になると毎年多くよせられます。
なかにはオーパ・クラフトの前身の会社名のものが出ていたり,形はよく似ているけれど微妙にオーパ・クラフトのものとは違うボートが,オーパというブランドのものだとして宣伝されていたりします。
まず,当社製でないものについてです。一時期,オーパ・クラフトの独特の船体結合方式である全周かみあい・フック式)を真似たボートが輸入されたり国内生産されたりしていましたが,その多くは,オーパ・クラフトのものと比べて圧倒的に強度不足であり,部品破損など重大な事故に繋がりかねない危険な水準でした。全周かみあい方式は,内部の繊維積層を綿密に設計しないと,荷重が集中して破断に至る恐れがある重要保安箇所です。そのため,オーパ・クラフトでは徹底した設計時の検討・検証と,生産時の品質管理を行ってきました。安易に真似をした事業者すべてが撤退したのは,その手間や検証を惜しみ,結局満足の行く実用品質が得られなかったものと思われます。分割ボートの結合部は,大変複雑な力が加わる,安全保安上とても重要な箇所です。素人判断で大丈夫だろうと,ボルトや金属フックのみにたよると,変形ですぐに締結が難しくなったり,想定以上の荷重負荷や繰り返しの負荷による金属疲労で金属部品が破損します。それがわかっているから,オーパ・クラフトの分割ボートは,多少重量が増えようと,FRPによる全周かみ合わせ方式をとっているのです。現時点での各種素材の品質や技術水準では,分割ボートの船体締結技術の解は,当社としてはFRPによる全周かみ合わせ方式しかないと思っております。
また,船体外形や
次に,当社,あるいは科研工業が生産した古いボートについてです。古いとは,通常の利用・保管(週に1回程度の出船,直射日光を避けた保管)であっても,生産から20年程度以上経過したものを想定しています(保管が直射日光があたる場所であった場合,年数はもっと短くなります)。多少の衝突には耐え抜く設計と,紫外線対策を施した資材を使用しておりますが,さすがに数十年も使用されていると,端部や船底などを中心に,部分的に強度が弱った箇所が出てき始めます。船舶検査があれば,こうした強度的に気になる場所を見つける機会にもなり,適切な補修でよいのか,廃棄すべきなのか判断できますが,2馬力艇は法定検査がありませんので,ユーザーが気が付かないと,なかなか専門的な品質検査の目が及ばず,問題に気づけないことがあります。
大変残念なのは,こうした問題がある艇,ありそうな艇を,塗装でごまかして売っぱらってしまおう,オーパの名前をつけて売ってしまおうというような行為が個人売買サイトや中古品流通市場などでしばしば見かけられることです。
実際,冒頭に述べた当社へのご相談で,買った船体を揺らすと船体内部から何か異音がする,少しかたいものにぶつけたら船体が割れた・穴があいた,出品されたときの説明ではオーパ・クラフトブランドだったはずなのに全周かみ合わせ方式の船体結合方式ではなかった,など,買ってから当社にご相談いただくケースが毎年何件もありますが,いずれも当社のボートでなかったり,30年以上前に生産されたものを塗装で新品に見せていたというケースばかりでした。
事実をごまかす,都合の悪いことを隠すといったような不誠実な対応で一番被害を被るのはユーザーの方々です。自然はごまかしが効きません。強度不足の場所があれば,真っ先にそこが壊れます。ボートはお客様の生命をお預かりする製品です。オーパ・クラフトは,スタッフ全員,安全を第一に考えて行動しています。
オーパ・クラフトのボートは一生使える,そんなコンセプトでボートの開発・生産を長年してまいりました。当社からご購入いただいたお客様,正規のオーパ・クラフト製のボートをお持ちのお客様は,どうぞ遠慮無く当社に何でもご相談ください。
但し,すべての艇が一生使えるわけではありません。適切な取り扱い,メンテナンスがあってこその頑丈さなのです。場合によっては廃船をお勧めする場合もあることはご承知おきください。その場合,廃船手続きや廃棄のお手伝いも(有料ではありますが)させていただきます。
毎年,繰り返して申し上げていますが,信頼できる取引相手から利用・保管履歴情報を得て納得して買われる場合を除き,中古市場でのボートのご購入はおすすめできません。ご注意をお願いいたします。