謹んで初春のお慶びを申し上げますとともに、旧年中お世話になった方々に心より御礼申し上げます。
昨年一年間、日本全国のお客様からご注文をいただき、またいろいろなご理解や温かい励ましをいただきましたことに、スタッフ一同言葉にならない程励まされ、大きな勇気をいただきました。重ねて御礼申し上げます。
昨年の一年を振り返りますと、千葉県をはじめ全国で大規模な水害が度々発生し、多くの方々が被災されましたことにスタッフともども大変心を痛めておりました。まだまだご不自由な生活をされていらっしゃる方々も多いかと案じられます。一日も早い生活再建を心よりお祈り申し上げます。そんな方々を大いに支えられた大変多くのボランティアの方々のご活躍を知る度に、温かい日本人の国民性を強く感じ、日本人としての誇りをあらためて感じさせていただきました。
私達はお客様の生命をあずかるボートという製品のメーカーとして、私達だからこそできる「命との真摯な向き合い方」を更に探求して参りたいと感じております。
昨年は、弊社の救助艇を「救助現場の最前線で更に役立てる」ためにはどうしたら良いか、救助艇の製造とレジャー艇の製造をいかに両立させるかを自問自答し続けた一年間でした。
防災艇事業では,2019年は年始に沖縄へ台風対策としての多くの救助艇をお届けしたのを嚆矢として、日本全国へ納入する防災艇の製造が続き、年末には国による広域対策として新開発された大型の水害対策用特殊車両に搭載される専用艇の生産、納入の任を受け、多くの救助艇をスタッフとともに願いを込めて、無理を押しながらも精一杯務めて製造・供給してきました。
それにともない、大変申し訳ないことに一部のレジャー艇のお客様への納品が予定に大幅に遅れる等、当初予期できなかったことも起こりました。幸い,多くのお客様より、大変温かいご理解や大いなる励ましを賜りました。年頭に際しまして、オーパ・クラフトの艇をご支援いただいている皆様に、あらためてスタッフ一同より心より御礼申し上げます。
弊社は長年,「人命に直接関わる重要保安部分は、設計段階で各種の強度試験を繰り返した後に、製造段階にあっては決して他社への委託をせず、また自社内できめ細やかな検査体制を構築して自社の目を行き届かせる体制で製造・販売する」ことを最も大切な経営方針の柱の一つとしてきました。より進歩した強度・耐久性を求め、一昨年はジョイント部分やフロートで新たな検査工程・検査方式の運用を開始するなど,各種の変革をしましたが、2019年は更に、重要な工程にはトリプルチェックを大胆に取り入れるなど品質保証体制の更なる強化を図りました。
分割ボートをご利用いただくオーナー様にとって、最も安全性が気になるのが船体のジョイント部分やフロート取り付け部分であろうと思います。おかげさまでオーパ・クラフトの製品は、長年に渡ってこうした重要部位の破損事故をおこさず、関係各方面から大きな信頼を寄せていただいておりますが、2019年の一年は、より万全の体制、より一層安心できる船体へとさらに進化させてきました。これまで以上に製品のポテンシャルを磨くことで、標準的使用条件1においては、更なる余裕を持って使用に耐え抜くように製品を強化しました。「ご信頼していただいたオーナー様へ益々大きな安心をお届けしたい。」と、製造スタッフと共に協議を重ねながら、日々生産・品質管理の改善をしております。
スタッフ全員のとりくみが浸透し、以前からのチームメイトはもとより新たに加わったスタッフの技量も一段と伸び、ボートの発送、出荷を見送るスタッフの笑顔がますます輝いてきた一年となりました。会社が一丸となって安全な製品を送り出すという方針の元、チーム・オーパのメンバーの自負と自信が浸透していることが実感できます。
2019年はフロートが小型リジットタイプのボートの安全性向上に大いに寄与するという価値観が業界関係者全体に広がったという手応えを感じた1年でした。
2018年より,オーパ・クラフトは、個人ユーザーのお客様への分割ボート販売にあたり、すべて転覆防止用フロートをつけた状態で販売をする、つまりフロート無しのボートはご注文を受けないとの販売方針を実行に移しました。
そして引き続き、2019年は業界や監督官庁など関係する皆様にフロート装着の効果と必要性を繰り返し訴えてきました。2018年に引き続き,昨年は行政・業界団体関係者が集まる小型ボートに関する検討会が開催され、いかに安全性を向上させるかという議論がされてきました。そこで,弊社は、国内小型ボートメーカーを代表する3社の内の一社として選んでいただいた責任を果たすため、「リジットボートに装着するフロートの必要性」を繰り返し訴え、これからのミニボートのあり方について、業界を代表して提言を行いました。
その結果、関係組織・団体が協力し合って発行されることとなったミニボートの安全ガイドブックに、フロートの有用性が新たに記述されることとなりました。制作されたハンドブックは,一般社団法人日本マリン事業協会に掲載されています。
また,従来のミニボートの安全に関係する資料は海上保安庁のサイトにも掲載されています2。
この数年、小型ボートへのフロート装着の必要性をひたすら訴えてきたことが報われ、小型ボートの安全への取り組みがまた一段階前へ進むことができた一年となりました。
ここ数年、お客様の小型ボートに求める価値が変わってきたなと実感しています。
オーパ・クラフトのボートは、お医者様をはじめ長年医療の最前線で、正に「命の重さ」と向き合ってきた方々や、小・中・高校のみならず、大学等教育関係でこどもたちや学徒らの命を預かり,その強みを伸ばすという重責を担われてきた方々、一級建築士をはじめ高度化する建築の最前線で建築物の安全性においてとことんご苦労されてきた方々、民間の法人や公益法人の幹部や代表として長年品質管理や製品の安全性、サービス向上に心血を注いでこられた方々、警察や消防の幹部として真正面から人の命と向き合ってこられた方々、など「人の命」や「品質や性能やサービスの向上」ととことん向き合ってこられた多くの方々からご用命いただくことが大変多くなってきました。そうしたご苦労を重ねられた方々は、「安全性や品質の向上は一朝一夕では叶えられない」ということを大変良くご理解いただき、しばしばオーパ・クラフトの取り組みに対してお褒めの言葉を頂戴します。御礼を申し上げますと、こちらの方が大変恐縮をする程の激励のお言葉をいただく機会が増えてきました。新年に際し、あらためて御礼申し上げます。
弊社はハードの面においては、船体における重要保安部分には、ストイックに、過剰と言える程の品質向上を追い求めてきました。さらにソフト面においても日本で初めての試みとして、免許不要の2馬力艇オーナーの方々を対象に、海上保安庁と協力して「ミニボートのための海上安全講習会」をすでに10年以上に渡り実施してきました。そうした地道な活動に対して大変高い評価をしていただき、「安全思想が徹底しているから御社製の艇が一番安心できるから。」との理由からご用命いただける方々が、年々着実に増えてきております。逆に「安心できる物は安くはできない。」「強度試験までしてこんなに安全な艇がこの程度の価格で実現できるのだろうか・・・?」との声を時々いただいています。
コストがかかっていることが頑丈で安全な分割ボートの供給につながっていると理解していただけ,安心して長年に渡ってご利用いただける製品を求めるお客様が増加していることは、オーパ・クラフトにとって大いに励みになります。
2016年に弊社が発売いたしました業界初の「はねあげフロート」は、おかげさまで2018年に引き続き2019年も大変ご好評をいただきました。弊社が18年をかけて開発してきた「はねあげフロート」は、最高に便利だからこそ使うことが当たり前となる安心なミニボート必須の装備品として、特別な広告・宣伝をしていないにもかかわらず、固定式ではなく「はねあげフロート」を、との指名注文がほとんどを占めたことは弊社の想いが形になったということでもあり、大変嬉しいことでございます。
「はねあげフロート」を、小規模企業でありながらも世界に先駆けてでも開発しなければならないと強く意識したのは、固定式フロートの開発に着手した段階からでした。フロートのような安全に関わる装具は、当然のことながら,ユーザー様に実際に使用していただかなければ意味がありません。しかし,船体の脇にとりつけるフロートは、安全性の向上に非常に貢献するものの、走行時には抵抗となるため、ネジ止め式など手間がかかるものは,すぐに装着率が下がるのではと懸念いたしました。そういうわけで、オーパのフェンダー・フロートはワンタッチ脱着,所要時間10秒以内という世界初の仕組みを開発することを目標にしたのです。しかし、たとえワンタッチ装着といえど,本当に海況が穏やかなときには、走行時の抵抗を嫌ってわずかながらも装着しない方がいらっしゃるのではという懸念は拭えませんでした。たとえ脱着の手間がほとんどなくても、走行時の抵抗感は装着時とそうでない時とでは明らかに異なります。実際、固定式フロートの発売後,実際の使用率をお客様に機会あるたびに尋ねましたが、脱着がほんの10秒程度で済むオーパ・クラフトのフロートは,95%を超える方が装着してからの出船とお答えいただきました。ですが裏を返せば、たとえ数%であったとしてもせっかくお買い求めいただいたフロートをお使いいただいていない方がいるわけで、その理由は,やはり走行時の違和感が原因ではないかということになりました。そこで、「一切迷うことなくフロートを装着してから出船していただく」というボートメーカーとしては前人未到の課題を満たすべく,理想のフロートの姿をとことん追求することを続けてまいりました。この安全思想の大きな柱を具体的な商品として結実させたのが「はねあげフロート」ですが,幸い、かなりの割合のお客様にこうしたオーパの願いをご理解いただき、はねあげフロートを選んで頂いたことに、二重,三重の喜びを感じております。
10月に、浜名湖において、マリン事業協会の主催するミニボートフェスティバル(試乗会及び安全講習会)への強い協力要請をいただき、地元ということもあり、はねあげフロート付きの艇を数艇持参し参加しました。その際に、親子で楽しそうに弊社の艇に乗船している姿が印象的でした。また、会場に一同に会したスズキ、トーハツ、ヤマハ、ホンダ等の主な船外機メーカー様やアキレスボート、ワイズ等のマリンの主だったメーカー様のミニボート推進担当の見識ある営業担当者様やボート倶楽部の編集長様とスタッフの皆様には、代わる代わる弊社のフロート付艇を試乗していただきました。「艇の組み立ての簡便さ、フロート&ドーリーの装着の利便性とタフさ、フロートを装着した際の海上での安定性、はねあげた際の走行性とはねあげの簡便さがいずれも驚きのレベルですね。ミニボートにおける一級品です。海外製品でも見たことが無い。長い納期にも関わらず大変人気を集めている理由が今回よく分かりました。」と多くの皆様から同じような評価をいただきました。開発の苦労が大いに報われた気がしました。
2019年は、オーパ・クラフトの救助艇、「はねあげフロート」の実力が防災分野において、更に認知していただけた一年となりました。
オーパ・クラフトが開発し、大手防災用品商社赤尾様を通じて販売を始めた防災用救助艇「RB-31A」は、2019年も引き続き、数多くのお引き合い、ご注文を全国からいただけました。国内最大級の防災展示会でもある「オフィス防災 EXPO」において、そごう百貨店・西武百貨店の法人向け外商部の扱い品として、ブースに展示していただき、民間の防災対策としてもご期待をいただきました。NHK様に生中継で取材をしていただいた際にも驚きましたが、日本でも有数の老舗百貨店様のブースに展示させていただく機会を得させていただき、大変光栄でございました。関係者の皆様に心より御礼を申し上げます。
リジットタイプのボートの安全対策については、引き続き2020年も,予定されている各種の会議において、更に「転覆防止用フロートの装着を国レベルでの推奨に格上げ」していただき、「国の関係機関が、フロートについて、業界とともに救命胴衣と同様の装着率向上を進めていただきたい」と訴えてまいる所存です。
商品開発面では、ボート上で快適に過ごしていただくための工夫を、新商品として結実させるべく、様々な準備を行っております。皆様方のご期待を超えるようなものをご提供できる日が来るのを楽しみにしております。
また、新たなジャンルのお客様へのご提案についても構想を抱いております。最近は、従来の官公需のみならず、民間企業様からも防災艇を活用した各種の危機管理や調査研究、福利厚生に関する御相談をいただく機会も増えてきました。また、地球温暖化や国際化の影響で、各種のリスクが明確に懸念されるようになってきました。防災・減災への備えや事業継続計画(BCP)について、どのような取り組みができるか、年内になにかしらの発表ができればと思っています。
生産面ではもちろん,各方面の皆様から激励,ご叱咤いただいている生産性の向上に取り組んでまいります。生産性を向上させて、こうしたご期待にお応えすることは喫緊の課題であります。できるだけ速やかに、皆様のご期待に沿えるよう、引き続き生産力向上を目指してまいります。
いよいよ本年は東京五輪の年です。益々オーパ・クラフトらしい新製品,オーパ・クラフトらしいものづくりを続ける一年としてまいりたいと存じます。新たなお客様,新たな要求事項,新たな価値の提案,… 取り組みたいことはたくさんあります。優先順位をつけ、不断の取り組みとその見直しを続け,一つ一つ着実に実現してまいりたいと思いますので,引き続き,オーパ・クラフトへのご支援・ご鞭撻をよろしくおねがいいたします。
新年を迎え、本年も明るく穏やかな一年となりますように。新しい一年が,皆様方にとっても、よりよい一年となりますよう。
2020(R2)年1月1日 有限会社オーパ・クラフト 代表取締役 福庭 正宏 スタッフ 一同