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ミニボートの安全性検証

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プロフェッショナル ミニボートビルダー blog ~ 船体設計製造から安全装備を日々考える~

ミニボートの安全性検証

 昨日,たまたま手元にあった,舵社さんの「ボートクラブ」を見ていて思い出したのですが,2020年12月号に,「海上保安庁が検証 ミニボートの安全性」という記事が掲載されています。この実験では,FRP艇の代表ということでオーパ・クラフトの分割ボートを提供し,その安全性について関係者の皆さんが検証いただいています。そのことについて,当社としては今まで一般の皆様には詳細は何もお知らせしていなかったので,あらためて記憶をほりおこしてこのことについて綴ってみたいと思います。

海上保安庁>ウォーター・セーフティー・ガイド>ミニボートの安全情報>ミニボートに乗るときに推奨される装備品 のページへのリンク

なお,このときの実験の様子は、海上保安庁の公式サイト内にありますウォーター・セーフティー・ガイドミニボートの安全情報ミニボートに乗るときに推奨される装備品 のページに,サイド・フロートの効果を表すビデオとして公開されていますので,ぜひご覧ください。この画像をクリックしていただくと別ウィンドウで上記ページが開きます。下の方にスクロールすると動画が掲載されています。( 動画への直リンク

実験施設の概要

横浜海上防災基地に停泊する海上保安庁艦船

実験が行われたのは,横浜にある横浜海上防災基地という海上保安庁の大型施設です。この防災基地は,災害時に海上保安庁が拠点として使用する施設で,資材備蓄や各種の訓練施設があります。この訓練施設では、普段は海上保安官の皆さんが,暴風雨の中での特殊救助の訓練をしたり,関係者のみなさんが装備品など救助資機材の性能試験を行っているそうです。この訓練のために使われるプールは大変特殊な機能を持っており、まず天井からはヘリコプターのホバリングなどで発生する強い吹き下ろし風を再現できます。更に、プール内で高さ 1 m 以上の波を連続して発生させることが可能で、加えて風速 15 m 以上の暴風を同時に発生させることができます。初めて中に入らせていただきましたが,その威容に驚きますとともに,こうした施設で普段から厳しい訓練をされている海上保安官の皆さんや,資機材の試験を行っていらっしゃる関係者の皆さんにあらためて敬意を払いたいと感じました。

実験の概要

今回の実験では,上記の荒天状態を再現できる施設で、ミニボートの安全性を確認する試験が行われました。試験対象はゴムボートとリジッドタイプのボートで,リジッドタイプのボートの代表として,オーパ・クラフトの分割式ミニ・ボート(2馬力ボート)タイプのレスキューボート RB-31A(F)(オーパ・レスキュー S3 相当)が,ゴムボートについては代表的なボートメーカーのものがそれぞれ選ばれました。かなり厳しい条件での試験となることや,費用・時間がそれなりにかかることから,普段から安全と評価の高いボートが選ばれたということで,当社としても光栄に思い,実験資材や知見を提供させていただくとともに,代表福庭とスタッフ1名で二日間に渡る実験に立ち会ってきました。

実験では,まず波高10cmと50cmの波を,ミニ・ボートの前や後ろ,そして横から受けるとボートにどう影響するのかという検証をしていただいています。オーパ・クラフトの船の場合,サイド・フロートの装着あり・なしの2つのパターンで実験が行われました。プールの中央に当社の分割ボートが位置を保ち続けられるようロープで固定されて、2名の乗員が船縁にピタリを体を寄せてあえて荷重が偏らせてフロートが無ければすぐにでも転覆の可能性がある状態をつくりだし、それから徐々に風や波の大きさを大きくしていきました。

サイド・フロート装着時は,最後には発生させられる最大の波と風速15mの風のもと、まさに嵐の中で小さなボートが浮かんでいる状態になりました。しかも、相変わらず乗船している2名は転覆の要因となりやすい船側にかたよって船縁にしがみついていました。

実験の意義

今回の実験は,小型ボートの中でも,特にミニボートに関わる専門家の方々の目の前で、これ以上はできない程の過酷な負荷を与えることで『装着しているサイドフロートがどの程度実際に転覆を防止する能力があるのか?また、それほどの過酷な条件下でもフロートは破壊しないのか?』を試す、サイド・フロート・ボートを手掛けるミニボート(2馬力ボート)のメーカーとして,その今後の可能性を左右しかねない程の大変責任の重い,日本初のサイドフロートに対する大規模な実証検証となりました。

当社としましても、サイド・フロート・ボートの開発にあたっては,厳しい設計基準の設定(高い安全係数を含む)と各種の実証検証を繰り返してきましたので、所与の実験条件からはボートの転覆もサイド・フロートや船体側への接合部の故障・破損もないと相当の自信は持っておりましたが、過酷極まりない検証の様子を目の当たりにし,会社代表であり開発した本人でもある福庭も、さすがに固唾を飲んでその検証を見つめておりました。

実験の結果

強風と横波を受けて大きく傾くも
転覆せず耐え続けるRB-31A(F)

強風と高波という悪い条件が重なり,乗員の方々は大丈夫だろうかと大いに気になりましたが、結果としては、当社のサイド・フロートつきミニボートは,45度近く船が傾きつつも,転覆することはありませんでしたし,船内への浸水もほとんどありませんでした。

また,このような厳しい条件でサイド・フロートつきミニ・ボートが乗員2名の安全を守り抜いた様子を見ていた実験関係者(海上保安庁の方々はもちろん、それ以外にも国土交通省、小型船舶検査機構、海洋技術研究者、その他公益法人の方々など約50名程)からは,驚きを隠せないどよめきが起きていました。

技術的に見れば,最も危惧された転覆が起きないことは,当社のボートの安定性・安全性に対する考え方が間違っていなかったということであり,また,強風と強い波によって莫大な荷重がフロートの取り付け部にかかったにも関わらず全く問題がなかったことから,やはりサイド・フロートやその船体への取り付け方法についての当社の考え方,生産の実践や品質管理に問題が無いことが証明されたと言えると思います。それゆえに,実験終了時、「15年に渡り、世界最高レベルのサイド・フロートを作りたい、大切なお客様の命をとことん守り抜きたい。」との想い一心で、フェンダーという資材を使った小型で頑丈な世界唯一のサイド・フロートの開発に没頭し続けたことの苦労が本当に報われた気持ちがしました。

また、同時に小型ボートの中でも3.3m未満のミニボートや2馬力ボートと呼ばれる大きさの小型ボートにおいては、サイドフロートの装着が必須であると確信をいたしました。そのことをこれまでも、国や各種公益法人が主催する各種委員会の委員として参加させていただいた際などには声高にミニ・ボートへのフロート装着の必要性を訴え続けてきましたが、その活動を今後も継続的に行う必要性を心の底から感じた検証となりました。

結語

まだフロート無しでFRP製のミニボート・2馬力ボートをご使用の方々は、今では各社からいろいろなタイプのフロートも発売開始されておりますので、ご自分のミニボートにふさわしいフロートを選んでいただき是非ご使用を開始して下さい。また、現在ゴムボートをご使用の方々で、これからFRP製の小型ボートやミニボート・2馬力ボートへの乗り換えを検討されておられる方々は、ぜひサイドフロート付きのミニボート・2馬力ボートをお買い求め下さいますようお願い申し上げます。

ただし,サイド・フロートには波や風の影響を受けて,非常に複雑で大きな力がかかります。DIYでフロートを取り付ける方も多くなっているようですが,技術的な検討・検証が足りないフロートや船体への取り付け方法は,危険と隣り合わせとなります。ちょっとしたことで簡単にフロートがはずれたり,少し大きな力がかかることでフロートのみならず船体の破損が発生していることも耳にしますが,こうしたことは,生命に関わる重大な事故につながる危険性をはらんでいます。フロートを使われる際は,ぜひ,信頼できる商品をお買い求めいただくようお願いいたします

また,今回の実験のような極端な状態は,あくまで技術検証のために作り出したものです。一般の方がボートを楽しまれる際,運用される際は,決して無理をなさらず,安全のためのルールをしっかり守った上でボートをご利用ください

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