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ミニボート・小型ボートの一歩踏み込んだ安全に関するお話

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プロフェッショナル ミニボートビルダー blog ~ 船体設計製造から安全装備を日々考える~

オーパ・クラフト~~プロフェッショナル ミニボートビルダー blog ~ 船体設計製造から安全装備を日々考える~~~ミニボート・小型ボートの一歩踏み込んだ安全に関するお話

ミニボート・小型ボートの一歩踏み込んだ安全に関するお話

 本年も年の瀬を迎えました。1年を振り返り、発生した小型ボートにおける事故を見つめ直し、あらためて分割ボートを含めたミニボートや小型ボートを使用する際の「一歩踏み込んだ安全性について」ご説明したいと思います。また、このページの最後には、無料で手軽にミニボートの安全を学べる e-ラーニング講座をご紹介しております。

はじめに

 2馬力船外機を使用することで、多くの方々が気軽に3メートル未満のいわゆる「ミニボート」ジャンルのボートを楽しんでいらっしゃいます。マリンレジャーの幅が広がることは喜ばしいことです。しかし、それに伴って軽微な事故から重大事故まで発生件数が徐々に増えてきています。

 お客様のみならず、マリンに関わる全ての人々の安全こそ、オーパ・クラフトの最優先事項です。そこで、以下に「ミニボートにおける一歩踏み込んだ安全性」について申し述べていきます。データから見てみれば、マリンレジャーとしての海水浴や、自転車を使ったサイクリングと比較しても、ミニボートはこれらより危険なレジャーでは決してありませんので、尻込みをするほどの極端な不安を抱かれませんように願っております。

 では、特にここ数年、早春や晩秋における事故が目立ってきているような気がしておりますので、まずは春の注意点から見ていきましょう。

早春・晩秋の注意点は突風

 まず、早春における注意点として、ゴールデンウィークを過ぎるまでは、突風が大きな脅威となります。突風が吹く恐れがある時期にあえて出船を試みる、それがそのまま海難事故につながるケースが徐々に増えてきているように思われます。

季節条件に由来する要因

 突風は、様々な要因が考えられます。特に季節の変わり目は、海陸の寒気と海水温の差で上昇気流が発生しやすくなり、天候が不安定になる、春一番などの季節風が吹く、山を越えて吹き下ろす風が平野部あたりで風速を増すフェーン現象がおこる、昼夜の気温差が大きいために海陸風がより強くなる、などなど、突然天候が変わるという現象や強風が起こりやすくなる季節です。

 波がおこったり、風が吹いても安心だからと、近年、ミニボートに「転覆防止用のサイドフロート」を装着する方が増加しています。ですが、フロートのような安全装具に対する過信からか、まだ春にもなっていない時期に、危険を犯して出船を試みる方々が増えてきているように感じます。これはある意味、本末転倒と言わざるを得ません。フロートを装着していればどんな状況でも絶対に安全、ということではございませんので、誤解無きようお願いいたします。早春や晩秋にはかなりの突風が発生する機会が増えます。突風に煽られれば、重量が軽いミニボートはフロートがあっても全体が持ち上げられてフロートによる浮力を効果的に活かせない状態になりかねません。

 加えて、それ以上に頭に入れておいていただきたい事は、「低水温により低体温症を発症すると、30分前後で意識を失ってしまう、ということが起こり得る」ということです。気温の上昇に伴って海水温も上がってきますが、海水温の上昇するタイミングは気温に比べて1ヵ月以上の遅れが生じます。つまり4月中頃の海水温は、真冬並みの低水温のままなのです。したがって早春に出船する場合は、局所的な突風が発生することを大前提として、天気図などを読み解き、海況が穏やかであることを確認する必要があるとともに、万一の場合でもすぐに救助の手が届く場所、つまりできるだけ岸近くで楽しんでいただくことが大きな安心につながります。この点にご留意いただければ、春や秋のミニボートレジャーは、過ごしやすい気温の中、その時期でしか得られない釣果といった季節ならではの楽しみを感じていただけます。

地理的な条件に由来する要因

 季節的な要因の他に、地理的な要因も、事故を誘発するもとになることがあります。例えば、北陸方面の福井県、石川県、富山県、新潟県あたりは、天気予報にはほとんど現れない短時間の局所的な天候の急変が発生します。私(福庭)も、かつては愛知から遠くない福井県の海へ毎年のように出かけ、年間あたり、数十回、当社のボートで釣行し、ボートフィッシングや、愛知県側には少ない海と山の雄大な景色を楽しみました。しかし、アルプス山脈が近くにそびえ立っているため、ゴールデンウィークの最中にもほんの短い時間ですが突風を体験することがありました(もっとも、6月に入りますと、不思議なほどに突発的に発生する突風が発生しにくくなりますが)。

 なぜ山が近い海で突風が発生するのかというと、近距離での地面の高低差が原因です。高さが違うことで、地温や気温、水温が場所によって違いが大きくなります。温かい場所では空気が膨張し、寒い場所では空気が収縮しますが、それが、気圧の違いにつながります。風は、気圧が高いところから低いところに吹きますが、谷や峰の存在も重なり、極端なまでの局所的な空気の入れ替わりや複雑な風の流れが起こり、それはそのまま強い突風という形になって現れます。地理的な要因で起こる自然現象としては、海水浴シーズンに時々遊泳者を沖の方向へかなりの勢いで流してしまう「離岸流」も思い起こされますが、強さという意味ではよく似た現象と言えましょう。

 要するに、こうした方面に出かけられる場合は、春の場合は遅めの春以降に出かけていただければ、突風に出会う確率はかなり下がると言えます。また、秋について申しますと、9月中過ぎまでは、こうした突風は発生しにくいのですが、9月終わりごろから徐々に発生するようになります。そうした理由から、私(福庭)は、秋についてはかつて体育の日であった10月10日を、日本海へ出かける最終のタイミングとしての目安としておりました。

突風にどうそなえるか、突風に遭遇するとどうなるのか

 では、早春や晩秋における局所的な突風とその被害を避ける方法についてもう一歩踏み込んで説明いたします。

突風が吹く様態

 早春や晩秋のある日の天気予報で、その地方の予想される風速が 2mから3mであれば、常識的には穏やかな海況であり、ボートフィッシングを楽しめるはず、と思いがちですが、早春や晩秋の頃は、30分前後で状況が一変し、風速10メートルを超える突風が発生することがあります。

 頬をなでる風に「あれ?」とわずかな変化を感じてから20~30分後に突風が吹いてきます。
そこからさらに約20分前後で大きな波(約3~4m)がやってきます。
さらに詳しく申し上げますと、

  1. 先ず最初にお感じになって欲しいのは、安定していたそよ風が徐々に強くなったり弱くなったりと少しずつ不安定になってきて、時には先ほどまで聞こえてなかった風の音がかすかに聞こえ始めたりしていないかということです。突風が吹く前は、これらの状況がおよそ20分から30分かけて強弱をつけながら強まってきます。
  2. その後、急に頬に当たる風がかなり強くなり風の音も強くなり、突風まじりの天候へと変化します。
  3. そして、明らかに突風まじりの風に変わったと感じられてからさらに20分前後経ちますと、いよいよ3mから4mの大きな波が現れ、打ち寄せてきます。

 つまりそよ風が少しずつ不安定になり始めてから、概ね40分以上経過すると、3mから4mの大きな波が打ち寄せてきますので、最初の風の変化を敏感に感じることができれば、充分に安全に帰ってくる時間的な余裕があるはずです。ですので、風が少し不安定になってきたら、早めに岸に帰ってくれば突風による危険を避けられる可能性がぐっと高まります。岸からあまり離れない、10分から20分の間に帰って来られる距離に居る、ということを意識されるよ良いでしょう。

3mから4mの高さの波に襲われるとは

 3mから4mの高さの波に襲われるとはどういう状態になると思われますか?あえて踏み込んでご説明いたします。これまで20年以上にわたり、こうしたことを体験した方々や関係機関の方々から聞かせていただきました。

 「自動車に例えて言うならば、止まっている普通乗用車の後ろから大型トラックに追突されるような衝撃を受ける…。気づいた時には、私たち乗船員とボートがあっという間に斜め上方へ3m〜4m跳ね飛ばされました。自分達は、気づいてみると救命胴衣を着たまま海に浮かんでおり、同時に跳ね飛ばされたボートは少し離れたところに浮かんでいました。近くで漁船も転覆したそうです。」

 こうした事態は、まさに交通事故とほぼ同じ事態です。こうした異常事態の中では、ボートに取り付けた転覆防止用サイドフロートの転覆防止効果の想定条件をはるかに超えた大きなエネルギーがボートにかかります。早春や晩秋に発生する局所的突風は、地元の漁師さんにとってもかなり厄介な相手です。要するに、この季節は船長(船の総責任者)、キャプテンとして、風の強さや向きなどの変化に敏感になっていただくか、早春や晩秋の出船を控えていただければ、ハードルはかなり低いものになります。

 ちなみに当社の転覆防止用サイドフロートは、波の高さについては1m位までのエネルギー量に対応することを想定して設計しており、様々な実証実験(想定を超えた最大波高1.5mを含む)を公的な実験施設において実施し、その安全性を何度も立証しています。しかし風速10mを超える突風によって発生する、20フィートを超えるプレジャーボートや漁船までも次々転覆を引き起こしてしまうような、まさに交通事故に匹敵するような莫大な衝撃エネルギーは想定しておりません。たとえフロートを装着していたとしても、用心して突風を避けていただくようにご注意ください。

太平洋側は安全なのか?

 では、地形条件的に穏やかな場所、例えば太平洋側や広い湾内ではこうした天候の急変を気にしなくても良いのでしょうか?いやいや、そんな事はございません。

 特に季節の変わり目に日本列島を度々縦断する季節性の前線が通過する前後で、突然天候が急変して、猛烈な突風が発生することがあります。太平側では特に東南方向から吹いてくる風は、その変化の具合によく注意する必要があります

 また、これも私(福庭)が経験したことですが、天候条件と海上交通条件の組み合わせにも気をつけていただければと思います。東南方向から吹いてくる風が徐々に強くなり始めてきた時、かなりの沖で大型船により発生した引き波が、自分のボートに到着するまでに思った以上に大きな波に成長していたことがありました。大型船の航行が比較的多い、太平洋側ならではの注意点となります。

 ですので、春から夏にかけては、たとえ太平洋側であったとしても、湾内ではなく、外洋に面しているところで出船する場合には、こうしたこともぜひ注意していただきたい点です。これについても頬に当たる風の強さや風向きに敏感になっていただければ、特に難しいことではございません。

おわりにあたって

 上記の内容については、一歩踏み込んだ内容となっておりますので、初心者用のベーシックな安全ガイドブックにはあまり掲載されておりません。読んでいただけた方は、ぜひ具体的な海況や、こうした天候の急変に遭遇した場面をイメージしていただき、備えをしていただきたいと思っております。

 ただ、誤解していただきたくないこととしては、広く海水浴も含め、マリンレジャー全体の中では、小型ボートを使用したレジャーは、基本的なルールや予測できる季節的な危険について学んでいただければ、危険度の少ないマリンレジャーだと言えます。加えて「人生に大いなる喜びとマリンの恵みを受け取ることができる、素晴らしい趣味」と確信しております。これまで数百名の方々から「小型ボートの遊びから数え切れない楽しい思い出を作ることができ、おいしい魚料理も食することができて、心の底から豊かな人生になったなぁと感じています」との感激や感謝のお言葉を頂戴しました。数百回出船して、存分に楽しんでいらっしゃる方々も把握しきれないほど多くいらっしゃいます。適切な知識を学んでいただきたいと切に願っております。
 
 最後のご紹介で恐れ入りますが、当社が所属しますマリン事業協会が作成しました「ミニボート Eラーニング」をご紹介いたします。これは、とても手軽かつゲーム感覚でミニボートの安全について学ぶことができる優れものです。これからミニボート遊びを始めようと考えていらっしゃる方及びベテランの方々が幅広く手軽に学べるまさに現代的なツールです。ぜひご活用いただきたく、よろしくお願いいたします。スマホの方は、下記のQRコードを読み込んでいただくか、その下のボタンをタップしていただいてもOKです。

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